第90話

曲が終わるのを待って、あたしはマミヤちゃんに近づく。




ピエがこちらを向いていたので、視線が重なった。




「あ、ちーちゃん」




ピエの言葉に、マミヤちゃんの肩がピクリと上がる。




でも振り向かない。




「ちーちゃんどこ行ってたのー?ってあら~?なんで服着替えんの?せっかくナイスチラリズムだったのに」




ピエはマミヤちゃんと手のひらは合わせたまま、不思議そうに目を見開いた。




それでもまだ、マミヤちゃんはこっちを向いてくれない。




「マミヤ…ちゃん?」




ピエのことは丸きり無視をして、あたしはマミヤちゃんの背中に問いかける。




「…」




無言で時が流れる。




(なんで…?)




あたしは底知れない寂しさが胸の中にやってきて、マミヤちゃんの腕を引いた。




「マミヤちゃん!!」




グイッと腕を掴むと、触り心地のよい質感であたしは少しだけホッとする。




マミヤちゃんに触れると、あたしはなぜかホッとするんだ。




「ちょ、ちょっとこっちで話ししようよ」




あたしはマミヤちゃんの腕を引っ張った。




「ごめんなさい、陽聖さん」




マミヤちゃんがそっと、ピエの腕を押す。




ピエがちぇっと口元をしかめ、回していた腕をしぶしぶ離した。

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