第91話
そんなやり取りに胸が痛む。
ちょっと目を離した隙に、マミヤちゃんに何が起こったのだろう。
告白されたって言ってた。
そして、二人は一緒に踊ってた。
そんなことしたらピエ、勘違いしちゃうよ?
期待持たせちゃうよ?
あたしはマミヤちゃんの腕を引きながら、唇を噛み締める。
そして王子から少し離れたフロアの隅で、マミヤちゃんと向き合った。
「何があったの?…なんでピエと…?」
あたしはそっと見上げるように問いかける。
マミヤちゃんは俯いたまま、キラキラ輝く頭を見せていた。
「あ、あたしさ、見てないうちにこんなことになってたから、色々聞きたいなって思ってさ。マミヤちゃん、ピエには告白されてるって言ってたから、こんなことしたらピエが期待しちゃうんじゃないかなぁ~って…思って…」
いつもなら意気揚々と返事を返してくれるマミヤちゃんが俯いたままなので、あたしは焦って言葉を並べてしまう。
それでもマミヤちゃんは動かないので、しまいには語尾が消え入るように小さな声になっていた。
「…マミヤちゃん?」
身を屈めてマミヤちゃんの顔を覗きこむと、マミヤちゃんはすっと瞳を逸らした。
「…千亜稀ちゃん、ごめんなさい。今はそっとしておいて下さい…」
そう言ってマミヤちゃんはあたしから離れようとする。
そんな態度に胸がえぐられるようで、あたしはグッと拳を握った。
「ちょ、ちょっと待ってよ、マミヤちゃん…」
肩に手を置くと、マミヤちゃんが反射的に肩を振った。
(…へ?)
振り払われてしまった手が、宙を掴んでそっぽを向く。
「………え……?」
「あッ」
マミヤちゃんがギュッと体を強張らせるのが分かった。
「ごめんなさい、本当に。今はそっとしておいて下さい」
そう言って、マミヤちゃんはトタトタとあたしから離れていってしまった。
あたしはその姿を呆然と見つめた。
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