第88話
着替えた服装は、女海賊版。
サスペンダーのついたストライプの入った茶色いパンツに、白いYシャツと茶色のネクタイ。
頭にはカウボーイ風の帽子。
…てことはこの格好はカウボーイなのか?
あたしは帽子をかぶり直して、みんながうごめく会場の扉を開けた。
「なっ!!!!」
その瞬間、視界に飛び込んできたのは、みんなが舞踏会風ダンスを踊っている光景だった。
ワルツ的なのんびりとした音楽が流れ、男女が向き合い、抱き合いステップを踏んでいる。
これくらいのことなら、最近は慣れている。
どうしてこんなに驚いたのかというと、“彼”と踊っている相手が“彼女”だったから。
しかし、大きな声を出しても、誰も受け止めてくれる風にはない。
みんなお姫様と王子様になりきっていて、甘い時間に酔いしれている。
あたしは必死に王子を探すと、王子は隅の方でグラスを揺らしていた。
脇で見つめる人の前を、背を屈めて通りぬけ、王子の傍に寄る。
「ね、ねぇ!なんでこんなことになってるのよ!」
オロオロと王子に言うと、
「…俺が入ったときには既にこうなってたよ」
王子は諦めたようにそう言葉を漏らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます