第88話

着替えた服装は、女海賊版。




サスペンダーのついたストライプの入った茶色いパンツに、白いYシャツと茶色のネクタイ。




頭にはカウボーイ風の帽子。




…てことはこの格好はカウボーイなのか?




あたしは帽子をかぶり直して、みんながうごめく会場の扉を開けた。




「なっ!!!!」




その瞬間、視界に飛び込んできたのは、みんなが舞踏会風ダンスを踊っている光景だった。




ワルツ的なのんびりとした音楽が流れ、男女が向き合い、抱き合いステップを踏んでいる。




これくらいのことなら、最近は慣れている。




どうしてこんなに驚いたのかというと、“彼”と踊っている相手が“彼女”だったから。




しかし、大きな声を出しても、誰も受け止めてくれる風にはない。




みんなお姫様と王子様になりきっていて、甘い時間に酔いしれている。




あたしは必死に王子を探すと、王子は隅の方でグラスを揺らしていた。




脇で見つめる人の前を、背を屈めて通りぬけ、王子の傍に寄る。




「ね、ねぇ!なんでこんなことになってるのよ!」




オロオロと王子に言うと、




「…俺が入ったときには既にこうなってたよ」




王子は諦めたようにそう言葉を漏らした。

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