第84話
その言葉をゆっくりと噛み砕いていく。
つまりは…早く帰りたいってこと?
「んふ!!!」
王子があたしの唇を挟み込む。
パクッと唇を食べられたので、あたしはびっくりして目を見開いた。
「もっかい言ってみろ」
うっすらと照れが見える王子の瞳。
「な、なにを…?」
あたしはドキドキとしながら王子に訊ねた。
薄暗い廊下の電気が王子に隠れて、あたしはますます暗がりに身を置いている。
零れる光が王子の茶色の髪に溶け込んで、光は集めていないはずなのに、王子の瞳は緩やかに揺れている。
クラクラする、そんな瞳に見つめられ、あたしはキョトンと王子の瞳を見つめ返した。
「つまりは、何て言った?」
え゛!?
『つまりは…早く帰りたいってこと?』
どうやらあたし、心の声が漏れていたらしい。
あたしはあわあわと口が塞がらない。
王子の怒りと照れの入り混じった瞳があたしの顔の前までやってきた。
(どひーーー!!!)
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