第83話
バシッ
王子の手を大きく叩き、あたしは服を直して王子と向き合う。
向き合うとは言っても、壁に追いやられた状態で、ここで啖呵を切っても示しがつかない。
「い、いきなり何す…!」
そう言いかけた瞬間、あたしの頭の上に両手をついていた王子が唇であたしの顔を上げた。
その唇に従ってしまう、あたしの唇。
王子は手さえも使っていないのに、あたしは王子の唇に捕まった。
「ん…」
あたしは大きく上を向く。
冷たいものがあたしの中に入ってくる。
ここまでくると、一気に王子のペース。
あたしはだんだんと王子の首に手を回してしまう。
王子はあたしがこのキスに弱いことを知っている。
ただのキス、だけであたしは王子に夢中になる。
悔しい…悔しいのに、あたしの体は言うことを聞いてくれないの。
深いキスを交わして、そっと離した唇。
今まで重なっていた唇を王子はそっと触って、言葉を漏らした。
「…いらないよな、修旅なんて」
王子が強い瞳で言う。
「え…」
「別にみんなで旅行なんてしなくても、自分たちで行けばいいだろ」
王子は煙たそうに眉をしかめ、逸らした瞳で呟いた。
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