第82話

感じる王子の吐息。




この王子、あたしのうなじに唇をつけている。




カツラをつけるためにピンで留めてあるので、首筋は見えたまま、王子はキスをし放題。




「ひゃっ…」




冷たい唇が首筋に当たるので、ぞくぞくと背筋が反応する。




「ッきゃ!!!」




今度は後ろから王子の手が伸びてきて、ピンク色の部分に手を当てた。




「…この生地、触り心地がいいな」




クスッと笑うように言う。




表情は見えないけれど、意地悪スイッチがONになっているのは確か。




(こ、このSヤロォッ)




あたしは涙をためて、グッと唇を噛み締めた。




「!」




その後すかさず、足の間に王子の海賊服が侵入する。




少しの風だけでもはためく裾は、そうやって形を崩されると、すぐ太ももが見えてしまう。




自分で見えるその乱れに、あたしは頬が染まった。




「…耳、赤いよ?」




王子は分かっていて、あたしに言う。




キッと涙目で睨もうとすると、そのまま唇を塞がれた。




「…ッ!!」




後ろから回されて体を触る手に、半分しか振り向いていない体勢。




キスするだけでも辛いのに、この手のひらに抵抗しなきゃいけないから、息が苦しい。




一生懸命手から逃れようとするが、王子の力には敵わない。




そのまま下降する王子の手。




このままでは…危ない!!!

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