第81話

連れてこられた先は、ひと気のない物置のような部屋の前。




窪んでいるので、人目に触れることもなさそうな場所。




そこまで来て、王子が腕を離した。




「ぷはっ」




ようやくまともに呼吸ができる。




あたしは胸元に手を当て、肩で呼吸した。




その瞬間…



「ギャッ!!!!」




王子があたしの頭からカツラを剥がす。




ピンで留めてあったので、絶対数本は抜けた。




(ま、マジで痛いんだけどーーー!!!)




あたしは薄っすらと目尻に涙を浮かべて、王子を睨み上げた。




その表情は、薄暗い廊下なのでどんな顔なのかよく見えない。




ペシッ




取ったカツラを王子は床に投げ捨てる。




「あぁ!!!」




あたしがしゃがんで拾おうとすると、世界が反転した。




ガンッ




壁に手をつけさせられている体勢。




王子を後ろに感じる。




「…へ?」




何だかすっごく嫌な予感がする。




あたしが恐る恐る振り返ろうとすると、ガシッと頭を掴まれた。




壁と向き合う結果になる。




(…ちーちゃん大ピーンチ!!)

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