第80話

─顔が大きく見える─




王子の言葉が頭の中でリピートされて、一人項垂れるあたしに、マミヤちゃんはオロオロと身を揺らした。




「あ、あたくしは似合ってるって思いますけど…」




「俺も可愛いと思うよ」




マミヤちゃんの隣でピエも言う。




ピエこそ金髪で、やっぱり外国人風。




そっちにツッコんでもらえなかったので、指先でクルクルと毛先をいじっていた。




“可愛い”という割には、あたしのことなんか見ていない。




「つーか克穂は見せたくないんだろ?ちーちゃんのそんな可愛…」




グイッ!!




充くんが嬉しいことを言ってくれている途中で、王子に引っ張られてあたしは体勢を崩す。




「はが!?」




せっかく綺麗にお化粧してもらったのに、そんなことは構わず、王子は後ろからあたしの首を絞めている。




「ぐ、ぐるし…っ」




「行ってらっしゃ~い」




充くんのニヤニヤバイバイを見た後、あたしが王子の方を振り返ると、王子は小さく舌打ちをして、締める力をますます強くさせた。




「ぐ、ぐぇ…ッ」




(な、何…ι?)




何だか不吉な予感のするあたしは、少しでも腕を緩めてもらおうと力いっぱい王子の腕を握っていた。

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