第76話

そして座らされた鏡の前。




アップにした髪に特殊な粉を乗せて、マミヤちゃんの髪はキラキラと輝いている。




全部自分でしたらしい、巻き上げた髪。




毛先がコロンと転がっている。




着替えさせられたあたしの姿はマーメイド。




スケスケしているボリュームのない生地に、あたしは体のラインが目立ってしまう。




胸元は水色のトゥルントゥルンのシルク素材に、折り返し部分から下は薄ピンクのこれまたシルク素材。




裾の部分はジグザグと切られていて、いくつものスリットが入っているようだ。




「マ、マミヤちゃん…これはあんまりじゃ…」




少しの風で舞い上がる裾を押さえ、あたしはマミヤちゃんに言う。




「スレンダーだからこそ、似合うドレスですわ」




マミヤちゃんはニッコリと微笑んでそう言った。




その笑顔は、久々に見るマミヤちゃんらしい笑顔だった。




「そ、そうかな…?」




久々のその笑顔と、似合うという言葉があたしの心に心地よく触る。




えへっと鏡の前で後ろ頭を掻くと、マミヤちゃんはあたしの髪をいじり始めた。




「人魚姫って言ったら、髪は下ろしている方がイメージに合いますわね」




マミヤちゃんはそう言うと、あるものを取り出した。

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