第74話

ガチャガチャと物が触れ合う音の聞こえる一室。




その中から漏れてくる声は全て細くて優しい女性の音。




どんなにガヤガヤ騒いでいても、女の子しかいないだろうと分かる一室。




あたしはピエに連れられて、その部屋の前にいた。




「こ、ここ…?」




あたしはドアの前、ピエに訊ねる。




「うん。みんな必死に支度中。ちゃんとしとかないと、ちーちゃんの愛しのダーリン、取られちゃうかもよ?」




頭の後ろで組み合わせた手はそのままで、ピエは笑う。




「じゃ、俺も最終的に準備しますかね」




そう言って、ピエは今来た廊下を帰っていった。




ホテルの最上階から一つ下。




各階止まりのエレベーターでしか止まらないココ。




大きな部屋だというのは、一目でよく分かる。




ふわふわの赤い絨毯は変わらず、ただドアノブがティーカップの取っ手のような形をして、これまた金色。




ゴツゴツと手のひらに触る質感を、ギュッと握り締めてあたしはその部屋の中に入った。




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