第73話

頬に手を当てられたまま、あたしは金髪王子を見上げると、その口元がフッと笑った。




「ぇ…」




「ちーちゃん、その顔かなりヤバイ」




ぶくくとお腹を押さえて笑う、その王子が髪の毛を掴んだ。




「あ、あ、ピエ!!!」




その金髪はカツラで、それなら多分瞳はカラコンなのだろう。




あたしはホッとしたような、なんとも言えない安堵感が流れた。




でも、王子と台詞も瓜二つ。




“その顔ヤバイ”って色んな意味で何回も言われたのを思い出す。




ドキドキしたのがアホみたいで、あたしは小さく吐息を落としてピエに聞いた。




「な…に、やってるの?変な変装」




ポカンと口を開けて問うと、ピエはまだ笑いを噛み締めながら言う。




「だってちーちゃんが来てないってマミヤが騒動してたから」




カツラを持ちながら、ピエは頭の後ろで手を組んだ。




若干、あたしの質問とは相違う答えが返ってきたが、今一番知りたかった答えを教えてくれた。




あたしは瞬時に意識がそちらに移り、ピエに近づく。




「マミヤちゃんどこにいるの!?」




一人置いてきぼりになっていたあたしは、ピエの胸元に喰らいついた。




「ほーんと、ヌケてんのか、ホントのアホなのか…ちーちゃんてつかめないね」




ピエが優しく笑いながら(でも言ってることは失礼)、あたしを案内してくれることとなった。

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