第71話

ブローッと車が遠ざかり、王子が言う。




「千亜稀、準備急がなくていいの?」




「へ?…準備?」




「夕食は大広間だって説明聞いてなかったわけ?」




王子が呆れて言う。




「あ、へ?ホント!?」




バスの中でそんな説明があったのか、あたしはマミヤちゃんのことが気になっていて、全然話を聞いていなかった。




「じゃ、また後で」




そう言って王子が背を向ける。




あたしも慌ててエレベーターに飛び乗った。




部屋に帰ると、マミヤちゃんの姿がない。




「はっ!?どこ行った!?」




あたしは焦りながら、カードキーを抜き、廊下に出た。




真っ直ぐな廊下は、観葉植物が赤い絨毯と対照の色を落として、色味を持たせている。




高級感溢れる茶色のドアに、金色のナンバープレート。




質感高い内装に、あたしは視界に一人の人が入ってきたのが分かった。




前方から外国人が歩いてくる。




(き、危険ッ)




一夜の出来事を思い出して、あたしは回れ右。




部屋に戻ろうとした。




ポフッ




その瞬間、慌ててしまったのでカードキーが柔らかい廊下に落ちてしまった。




焦って拾おうとするが、焦ると脂汗が出てきて、カードが上手く掴めない。




だんだん近づいてくるその外人に、あたし指は汗を吹き出す。




腰が引けつつも一生懸命指を動かした。




(ぎゃひーーー!!!)

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