第67話
同時に口も一緒に開けていたらしく、声をかけられるまでポカンと開いたままになっていたらしい。
「…なんて顔してんだ」
王子が廊下から部屋へ繋がる通路の所で言う。
壁に寄りかかり、呆れた表情でこちらを見ていた。
「ちょッ勝手に現れないでよっ!!」
あたしは口を拭って王子に視線を合わせる。
「それを決めるのは俺。勝手に集団行動乱してんなよ」
組まれた腕と、掛け合わせていた長い脚と、壁に寄りかかるその偉そうな態度が見事にマッチしていて、その俺様発言に、あたしはぐぅの音も出なくなる。
(…最近ちょっとばかし優しい王子になったと思ってたのに…)
観念してハイハイと適当な相槌を打つと、王子が言った。
「二人がいなくなったって騒ぎになってるけど?」
その発言を聞いてあたしは、これからの自分の運命が瞬時に浮かんで、一気に血の気が引く。
そしてみんなに迷惑かけたと思うと若干恥ずかしい!
「なっ!なんでそれを先に言わないのよーー!!!」
まだ意識の戻らないマミヤちゃんの手を引いて、あたしは王子のいる方へと足を急がせた。
お城を一周して、戻ってきたロビーのような場所であたし達は添乗員と先生に囲まれ、軽く説教を受けることになる。
(…この修学旅行、なんか全然楽しくない…)
あたしは心の中でブスッと顔をしかめて、先生からの解放を待った。
「マ~ミ~ヤ~」
ようやく解放され、ホテルに戻るためバスに乗り込もうとしていると、遠くからそんな声が聞こえてくる。
「マ~ミ~ヤ~~~」
本当に告白後の態度かと疑わしいほど、ピエは恥らう様子もなく、マミヤちゃん目掛けて走ってくる。
「陽聖さん」
マミヤちゃんも儚げに返事を返した。
「何があった!?どうした!?」
ピエはマミヤちゃんと視線を合わせるように、身を屈めてマミヤちゃんの頭に手を置く。
「…大丈夫ですわ」
力なくも微笑むマミヤちゃんを見て、あたしはもの凄い焦燥感にかられた。
だって…傍から見ていると、この二人かなりいい雰囲気なんだもん。
マミヤちゃん、充くんのことが好きなんじゃなかったの!?
あたしは何とも言えない感情に胸を焦がしていた。
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