第63話

そういうことじゃなくて…さ。




充くんが少しでも気持ちを言ってくれたら、マミヤちゃんはそれでいいんだと思う。




今は幼馴染みでも、傍にいられる、傍に居ていいんだって分かったら、それだけでも嬉しいと思うの。




今までずっと心の中で蓄積されていた想い。




きっと、もう溜めていく場所がなくなってしまったんだと思うの。




だから、充くんがちゃんと聞いてあげて欲しい。




充くんがその想いを掬ってあげて欲しい。




人の心って、きっと思っている以上に弱いんだ。




どんなに強い気持ちがあっても、変わらぬ気持ちがあると思っていても、留めておく場所がなくなってしまったら、その気持ちを持て余してしまう。




きっとマミヤちゃんは、今、そうなってしまっているのかもしれない。




吐き出す場所がなくて、…充くんじゃない他の誰かに吐き出したってしょうがなくて…。




でも、怖い。




もしそのまま捨てられてしまったら…いつもみたいに、かわされてしまったら…。




そういう気持ちなんじゃないのかぁ…




あたしは手のひらでカップを転がしながら、はるか上空の淡い空を見上げていた。




せっかくきた修学旅行で、こんな辛い思い出になってしまうのは嫌だ。




マミヤちゃんが笑ってくれていないと、寂しいよ。




あたしは小さくため息をこぼした。




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