第58話
「Thank you」
レジのお姉さんがニコニコと微笑んであたしに言う。
あたしは壊れたチョンマゲカチューシャを手に入れた。←全然嬉しくない
「あ!」
お姉さんから袋を受け取ったあたしは、ある風景が視界に入ってくる。
マミヤちゃんと充くんは二人、お店の中を物色していた。
そこはさっきのカチューシャ置き場で、マミヤちゃんが充くんの頭に何かを乗せては違うのを手に取っている。
充くんは頭につけると背を屈めて鏡を見る。
自分の頭につけたものを、マミヤちゃんの頭に乗せて優しく笑っていた。
(なんだ、仲いいんじゃん)
あたしはホッと胸を一撫でして安堵のため息をつき、ピエを探した。
ピエはというと、他の棚のところで外人の可愛い女の子に捕まっていて、その二人には気づいていない。
あたしの視線の先を辿って、王子も二人を見据えた。
王子もあたしと同じく、二人に視線を当てたあと、ピエを探すように店内に視線を移した。
そんな王子の瞳を見てから、あたしは王子に言う。
「ちょ、ちょっと近づいてみようよ」
あたしは王子の服を引っ張った。
「ヤダ」
即答、文字数にして2文字。
制服の裾を引っ張ったまま、あたしは王子にジトッと湿気た視線を合わせた。
「不細工だからなおさらヤダ」
逆半円的な瞳で睨んでいたあたしから視線を外して、王子はため息交じりで言う。
「ぶ、不細工ってねぇ!?」
あたしが怒りの奇声を上げると同時に、あたし達は腕を引かれた。
「へっ!?」
「?」
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