第54話

大きな瞳が少し震えて、マミヤちゃんが目を覚ます。




「マミヤちゃんっ!!!」





「今度は何があった?前倒れたときと同じ症状だったよ」




保健室の先生がマミヤちゃんの脈を取りながら、話しかける。




目を開いたマミヤちゃんは、まだ現状がつかめておらず、ボーっと天井を向いていた。





急遽呼ばれたあたし達の部屋で、マミヤちゃんはベッドに寝かされていた。




普段は起こらないけれど、マミヤちゃんは持病を持っているって言ってたのに…。




環境の変化だったり、急激な精神不安定状態になると勃発する。




前に2度、こうやって倒れていた。




1回目はテニス対決のとき。




2回目は留学事件のとき。




どちらも充くんが絡んでいて、マミヤちゃんは充くんのことになるとめっぽう弱くなる。




「…大丈夫か?マミヤ…」




自分がついていながら、倒れてしまったマミヤちゃんの額を撫でて充くんが言う。




「…だ、大丈夫ですわ」




すっと逸らしたマミヤちゃんの視線があたしの方に向いてきた。




「?」




そうして口を開く。




「千亜稀ちゃん、克穂との邪魔をしてしまって申し訳ありませんわ」




ふっと綻ぶ顔が力なく、あたしは何とも言えない気持ちになった。




「なっ!ぜんっぜん!克穂とはぜんっぜん!」




あたしは頬の染まる顔の前で、手のひらを振ってみせる。




するとマミヤちゃんの顔が、さっきよりも少し優しく微笑んだ。




「バビヤ~~~っ」




登場するのは号泣王子、ピエの横顔。




あたしとマミヤちゃんの中に割って入って、マミヤちゃんの白くて細い手を取った。




「大丈夫か、バビヤ~~~!俺がついていれば…俺が…」




どういうキャラなのか全く掴めないピエが、マミヤちゃんの手を取って泣いている。




「明日は俺がついてるから!何があってもついてるから!」

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