第51話

リビングのように豪華なソファーとテーブルの置かれた部屋で二人、英語だけのテレビを見ている姿がある。




「なぁマミヤってさ、髪って昔からそうだっけ?」




ソファーに寝転がって頬杖をついている充が、マミヤの濡れた髪を持って言う。




椅子に座っていたマミヤは、触られた髪先にドキンと心臓が動いた。




「そ、そうってどうってことかしら?」




視線を合わさないように背中でその声を受け止める。




夜、二人きりでテレビを見るなんて今までなかったことなので、ただそれだけでも緊張しているのに、髪を触られると自分の心音でテレビの音も聞こえない。




「昔はさ、ストレートって感じじゃなかったっけ?いつからくせっ毛になったの?」




充の問いかけにマミヤは素直に答えられない。




「…それは…充ご自身が大和撫子が好みだからですか?ストレートがお好みであると…」




マミヤは耳の後ろまで真っ赤にさせて、少し強い口調でそう言った。




そんなマミヤの返答に、充は少し間を開ける。




そしてふっと笑顔になって、口を開いた。




「それって帰国して最初に受けた新聞部のインタビューだろ?」




充はマミヤの髪を手櫛で触り、そのまま髪の毛を手放した。




「“好みのタイプ*大和撫子”ってやつね」




充はソファーに横たわった姿勢のまま、くくっと口元で笑っている。




そんな充にマミヤは少し赤い顔でキッと振り返った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る