第50話

へ…っ




その笑顔が、いつもみたいな「フッ」という憎たらしい笑いじゃない。




自然と綻ぶ頬が優しくて、一瞬、表王子のキラキラ笑顔になった。




目元が優しくて、すっと上げる頬が穏やかで眩しい。




瞳に力がある王子の、こんな王子スマイルは久々で、でもこんな自然な笑顔なんて数回しか見たことがないから、あたしはドックンドックンと体中が脈を打つのが分かった。




「……。なんて顔してんだよ」




毛穴まで全開で、意識を奪われていたあたしに王子は眉をしかめて呟く。




「……ッは!!いや、全然!何も考えてないっ」




あたしは咄嗟にそう口が動く。




そんなあたしに王子は何か閃いたように口角を上げた。




「…うそつけ」




つんっと王子は、綺麗な横顔を見せて言う。




(顔がいつもの意地悪顔に戻ってますがなーっっ!!!)




がぼーんと口を開けるあたしを自分のテリトリーの中に入れたまま、王子はカードキーで鍵を開けて中に入る。




「…少しくらいなら、時間大丈夫だよな?」




ふっと不敵な笑みを落として、王子はあたしを部屋の中に引っ張った。





す、す、少しくらいならって…ナニがーーーー!?!?!?





はわはわと腰は引けながら、でも王子の力には無意味な抵抗で、あたしは王子に引かれるがままに部屋に入ることになった。

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