第47話

ずるずると引きずられながらあたしは王子に従う。




あの瞳になっちゃうと、もう手がつけられない。




でも今回ばかりはあたしに非があるので、抵抗も反発もするつもりはない。




そりゃ怒るよね、危なかったもんね。




…でも、助けてくれたピエにあんな態度って…




ここまで思いを巡らせて気づくある事実。




『親父がいるから。相手でもしとけば?』




「お父様―――――!?!?!」




あたしは連れられて歩いていた廊下でボォンっと発狂した。




キーンと耳に中るあたしの叫び声に王子は眉をしかめてこちらを見る。




「…五月蝿い」




「漢字で言うな!っていうかなんでお父様が来てるって教えてくれなかったの!?あ、挨拶に行かなきゃ!」




あたしはアタフタと髪を押さえつけて王子に言う。



パジャマもパジャマな格好だけど、でもせっかくイギリスまで来てくれているのに挨拶の一つもなしとかダメだよね!?




あたしはゴーゴーとその場駆け足をして見せて、王子に急ごうと合図を送った。




すると王子の手が宙に上がる。




その動きの意味が取れずに、あたしはその場駆け足をしたままその手の行方を窺った。




そんなあたしの肩を掴んで、王子はそのままドアに押し付ける。




スローモーションで動いた王子の手に視線を奪われていたあたしは、気がつけばドアに背中がついていた。




…。




なにこれ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る