第36話
その声は充くん。
「あ、マミヤ、陽聖。もう席つかないと危ないよ?」
偶然そこに居合わせたようだけど、ばっちりナイスなタイミング。
振り向ても人込みに紛れちゃって、その様子は見えないけれど、確かに二人に向かって話をしているのが分かる。
(さっすが充くんっ!!!)
いまいちマミヤちゃんのことをどう思っているのか分からない彼だけど、こういうところがソツがなくてかっこいい。
あたしはこっそりとガッツポーズを決めて、席についた。
それから少しして、充くんが先頭に、マミヤちゃん、ピエと並んで帰ってくる。
「どうしてあちらに?」
マミヤちゃんは声高く充くんに聞いている。
きっとマミヤちゃんのことだから、もしかして陽聖にヤキモチを妬かれて…?!とか頭の中で女優っぷりを発揮しているに違いない。
それを計算してピエについていっていたのなら、この女、只者ではない。
あたしも一緒に期待が膨らむ。
「ん?後ろのトイレが混んでたから」
ふぁっと欠伸をしながら答える充くんに、あたしとマミヤちゃんは同じタイミングで頭(コウベ)を垂れた。
(ガックー)
その後ろでピエが口を尖らせる。
「とか言ってちゃっかり邪魔してくれてるじゃん…」
しゅんとするピエの顔がなんだか可愛くて、前を歩く充くんはかっこよくてあたしは少し頬を上げた。
そんなあたしに呆れた視線を投げかけている王子が隣にいるとも気づかずに…ι
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