第34話

強引に腕を引っ張られて、座席と座席の間のくぼみに引っ張られる。




みんなの死角になっているから、ここで何をしたってバレなさそう。




マミヤちゃんを探す旅はいつの間にか流れてしまい、あたしは目の前の光景に意識がいく。




「…ッ」




な…な…




なーーーーーー!!!!???




大きな窓から見えるその景色は、ハリポタオープニングのそのまんま!




綺麗に並べられた茶色の三角屋根の家が前ならえをしていて、オレンジの光をこぼしている。




「綺麗~~~!!!素敵っ!!!」




夕暮れから夜に移るこの時間帯のお陰で、窓から漏れる光がオレンジ色の円に見える。





「見て見て!すっごいきれい!!!」




あたしはテンションが上がって王子の腕をバンバン叩いた。





「…痛いってι」




王子が少し遅れて返事をする。




「だって…ッ!!!なんでそんなに落ち着いてるのよ…」




と、王子の方を見上げた瞬間、視界がふさがった。





チュッ…





「…」




ひゃ…?





目をまぁるく見開くあたしに、フッと笑顔を落としてキスを落としたあたしの唇に「しっ」と人差し指で蓋をする。




周りではだんだんとみんなもこの景色に気づき始めたようで、座席横の小さな窓に張り付いてる人が多くなっていた。




あたしはそんな周りの感動の声は耳に入ってこない。





隙あらば…こういうこと?




修学旅行だからって侮れない?




ていうか、むしろ二人きりになる部屋なんてないから、周りにバレないように気をつけないといけない…?




あたしは目を丸く開いて、冷や汗が流れるのを感じた。

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