第33話

なんだかんだ言って、優しいのはこういう所。




首を突っ込むな、とか言いつつもこうやって完全には無視できない。




あたしが見ていた二人の経路を王子は進んでいく。




ちらほらと席は空いていて、みんな思い思いに歩いているようだ。




…そういえば、みんなお金持ち貴族だからエコノミーとか乗ったことないんじゃない?




歩かないと怖い!と言わんばかりに歩いているとか…




あたしは前を歩く王子の背中を見つめる。




制服だけど、白のワイシャツってかっこいいよね。




ネクタイを外す姿がかっこいいって人が多いけど、この背中だって捨てがたい。




少し大人の魅力を感じさせるこの背中。




うっすらと見える肩甲骨の形がそそるというか…




あたしは惚けーッとその背中を見ていたので、王子が立ち止まったことにワンテンポ遅れて気がついた。




ドフッ




「ばひゃ!!!」




顔面にスクリーンヒットした王子の硬い背中。




「…何やってんだ」



と王子は冷たく放つだけ。




あたしは鼻を押さえて王子を見上げると、王子は言った。




「せっかくだから機内見学しとく?ファーストクラス、見てみたいし」




最後に付け加えた王子の言葉にあたしはギョッとする。




「え…?普段はどこの席で…?」




嫌な予感がする。



すっごく嫌な予感がする。




「普段?自家用機に決まってんじゃん」




ふっと笑って前を向く顔にあたしは苛立ちを感じた。




このボンボンやろーーーーー!!!!




「…と思ったけど、時間がないわ。そろそろギリギリだからこっち来い」




王子は時間を確認して、あたしを通路脇に引き込んだ。

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