第23話

ザワッ




そうして震える空気に、背後から奴が来たんだと知らされる。




「へぇ?千亜稀は俺の顔と付き合ってんだ?」




つんと冷たい瞳。




腕を組んで首を斜めに傾けている。




あたしは冷や汗が流れて、ゴクリと喉を鳴らした。




「や、ちが、違います…」




「ふーん」




そう言ってあたしの頭に腕を乗せる。




ズシッ




その体重のかけ方が本気で、あたしはますます冷や汗がダクダクになった。




「千亜稀ちゃん~!?」




怒りに震える親友と、体感温度氷点下を下回ったあたしの彼氏。




その後ろで「お~」と笑っている憎たらしい例のアイツ。




この問題の当事者。




「これ、マジでナイスショットじゃね?」




だなんていつの間にかマミヤちゃんの隣に陣取って笑っているもんだから、あたしはますます気が気じゃなくてピエに視線が行く。




それを見た王子がピクリと眉間を狭めた。




マミヤちゃんはピエのことなんか、てんで無視。




「…ひでぇ…涙」




涙を呑んだこの男に、穏やかに流れていたあたしの生活を壊されていっているような心地がする。




頭の上には、不機嫌な王子様。




隣には、怒りに震える親友に、その向こうにはトラブル爆弾を抱えた王子ピエール。





ドイツからトラブル(T)メーカー(M)な男がやってきた。







あたしの…




…あたしの平凡な日々を返せ~~~~!!!

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