第18話
『もういい…。俺帰る』
トボトボと肩を落とすピエールに、王子は
『おー。早く帰れ』
なんて、冷たい。
(ていうか誰に恋してるの!?)
あたしはゴクリと唾を飲み込んで、背中を向けたピエールに声を掛けようかと戸惑った。
数歩進んでピエールは立ち止まり、ちらりと肩越しにあたしを見て言う。
『ちあ…ちーちゃん、また明日ね』
その悲しげな流した瞳が、これまた麗しすぎた。
まつげの長さが際立って、王子より濃い色の瞳が際立って、あたしは不覚にもキュンとしてしまう。
ピエールがドアを閉じた後、ギュッと目をつぶって、あたしは自分を否めた。
(あたしのバカァ!!!)
『…千亜稀の浮気者』
(∑!!!)
王子はツンと冷たい瞳でそう言うと、スタスタと自分の部屋に戻っていく。
『あ、あの…?』
(さっきの続きは…?)
タランと流れる汗を拭い、王子にテレパシーを送ってみたけれど王子は振り返ることなく部屋に入ってしまった。
そして、今。
就寝を迎えて天井を見上げるあたし。
…まさか、だよね。
ピエールの天使って…や、まさかね。
あたしは眠れずにゴロゴロと寝返りを打ちながら、更けゆく夜にそっと寄り添って瞳を閉じた。
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