第15話
「って!!!」
寮でくつろいでいる今になって、あたしはハッと王子を払いのける。
ソファーの上、あたしの膝枕で本を読むのが最近の王子のマイブーム(らしい)。
くつろいでいた王子を膝から落として立ち上がり、あたしは叫んだ。
「なんで今日、帰ってきたの!?昨日までは明日って言ってたのに!!!」
あたしがいきなり立ったので、王子は柔らかいソファーの上にそのままの態勢でバウンドする。
ガフッと、綺麗なお顔に本が直撃したので、少し不機嫌そうに起き上がった。
「千亜稀…てめぇ」
目が怒っている。
(怒ったって怖くないんだからー!!!)
…と、心の中で叫んで、あたしは王子から数歩遠ざかる。
すぐに腕に引き寄せられて王子の腕の中に捕まった。
首筋に回された手のせいで、あたしは体を離せない。
王子は、あたしに視線を合わせるように背を曲げていて、やたらと顔が近いせいであたしはバクバクと心臓も瞳も落ち着かない。
王子の顔は、瞳は、人の心臓を掴み上げる、そんな力を持っている。
ドキマギと視線を回し始めたあたしに、王子は言った。
「あー、早く彼女に会いたいなー。あー、一日でも早く帰っちゃおっかな~。あー、きっと寂しい思いさせてんだろうなー…。って、思ってたのは俺だけってこと?」
最後の方は声のトーンが変わり、少し陰った瞳であたしをかざす。
その少し寂しそうな表情に、あたしはギュッと心臓を握られる思いがした。
「あ、あたしも…会いたかった…」
「うん」
王子の少し掠れた声。
「…寂しかった?」
(ぐっ…)
その瞳にあたしは心臓を掴まれる。
恥ずかしさをかみ締めてコクンと頷くと、そっと王子があたしの頬に手のひらを置いた。
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