第13話

その瞳の大きさは、恐ろしいほど大きくて、視線を逸らしても目が合っている気がしてしまう。




「ちーあーきーちゃーんん~?」



「は、はい…」




手だけはしっかり握られて、あたしは極力視線を逸らそうと努力を重ねた。




「あの黒髪男になびいたりしたら許しませんわよ~?」



「は、はい…ι」




あたしは小さく頷いて、観念する。




「ってえぇ!?なんであたしがピエールになびかないといけないの!?」




飲み込んだ言葉を噛み砕くと、納得いかないその台詞に今度はあたしが前のめりになった。




「だって千亜稀ちゃん、“王子が黒髪だったらな~”とかおっしゃってうつつを抜かしそうなんですもの」




「ぐっ…」




さすが親友。




そこを見抜いているとは恐れ入る。




あたしは少し言葉を噛み砕いたので、反論するのが遅くなってしまった。




「…ところでピエールって誰ですの?」




グッと恥じるあたしに、マミヤちゃんはキョトンと聞いた。




その瞬間。




「はーい、ピエールこと佐伯原陽聖でっす!俺、このクラスなんで、みんなよろしくね♪」




廊下から登場したピエールに、クラスにいた女子が目を見開いた。




「「………ッ」」



「…3秒前…」



「へ?」



「2、1…」



「「「キャーーーー~~~~~!!!!」」」




教室内が震える。




「3ショットだよ、3ショット!」



「絶対欲しい!」




女性諸君がこっそりと携帯を持ち上げる。




王子に充くん、そしてピエールの3ショットを画像として収めようと必死になっていた。




ナイスなカウントダウンをしたのは王子。




「…な、なんでピエールがあたし達のクラスなの!?」




あたしはすかさず王子の傍に駆け寄ると、王子がゆっくりと口を開いた。

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