第10話

前まではなかなか見れなかった、冷たい中に温かさを感じる、王子特有のこの笑みにとろけた後、あたしはハッと冷静になる。




黒い髪に綺麗な顔立ち。




本物の王子よりは少し背が低くて、横に厚い。




でも二人で歩いていたなら絶対…女も男も振り返る。




佐伯原家の血筋であることは間違いない。




黒髪で美形っていうと…?…もしかして…咲人くん?




いやいやまさか、だよね。




1ヶ月見ない間にこんなになっちゃうってこと、ないよね?




(…でも!この家系なら不可能も可能になるかも!!!)




あたしは恐る恐る振り返ると、黒髪王子があたしのすぐ後ろに立っていた。




「ギャー!!!」




それに驚いて後ずさりすると、あたしは王子の足を踏む。




「っι」




「ごめっ…ってギャーー!!!!??」




王子に謝るために、黒髪王子に背を向けた瞬間、後ろから抱きしめられた。




「初めまして。オラ、佐伯原ピエールwドイツ生まれドイツ育ち。克穂の従兄弟の17歳っす!…つまりはタメってことね」




そう耳元に吐息を当てながら囁くので、あたしはゾゾゾっと背中が笑う。




…って…従兄弟ぉ!?!?!?





「…ここはピエールにツッコめよ…」




驚いて固まるあたしを、バリッと黒髪王子から引き離し、王子がボソリと呟いた。

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