第9話

あたしは力いっぱいその男の胸を押して、後ろを振り向く。




そこには片足に体重をかけ、腕を組んで不機嫌そうに斜めに睨む王子の姿。




待ちわびた、王子の姿があった。




少しくせのある茶色い髪。



力のある瞳に、それを際立たせる綺麗なまつげ。



通った鼻筋はシャンとしていて、唇は薄くてほんのり色付いている。




待ちわびた、ますますかっこよくなった、あたしの王子様!

(こんなこと滅多に言わない)




あたしはその腕から抜け出て、王子の元に駆け寄った。



「お、おかえりっ…ッ」




王子があたしの頭をグイッと引き寄せて、あたしの顔を上げる。




「…ただいま」




すっと冷たく笑う笑顔に、強引なその態度に、あたしはドキンと胸が鳴った。




これが…これが王子なの!




ほわんっとピンクのオーラが心を包む。




そして一つの影を落とす。




じゃ、じゃぁ今背中を向けている、王子に似た男は、誰…ですか?

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