第8話
王子が右足に体重をかけ、左足に体重をかけ、あたしを抱きしめたまま、大きく左右に揺れている。
王子に全部を委ねさせられているあたしは、その動きにシンクロするしかない。
王子があたしを抱きしめたまま、鼻歌交じりで呟いた。
「こんなもんかー、まだまだ愛が足りないな~」
(はぁ!?)
あたしはガバッと王子を見上げ、睨んだ。
あ、…あれ?
小さな違和感を感じる。
顎に、ホクロ…なんてあったっけ…?
「…いつまでそうしてる気だよ」
ドキィッ
後ろから聞こえる不機嫌な声に、あたしはギクリと肩を上げる。
言われてみれば、コノ声の方が低くて、でも澄んでいて綺麗。
感じた違和感は正しかった。
この男、王子じゃ…ない!
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