第89話

「親父が、蜜歩を俺の嫁にしたいと思ってる。ただそれだけ」




冷たく王子が言葉を落とす。




………。




……?




あたしはその言葉に凍りつき、ゆっくりと足元に視線を落とした。




え?


どういうこと…?


それって…

それって……?




「違いますの!そうじゃありませんの!!」




マミヤちゃんがすかさず、言葉を続ける。




「日本に克穂…さ…、克穂の」



ここまで言う時に、マミヤちゃんはあたしの方を向いて瞳をキツくつぶった。




その行為が、謝罪の色を写している。




あたしが再び力なく微笑んで頷くのを見て、マミヤちゃんは言葉を続けた。




「日本に克穂の彼女…千亜稀ちゃんがいると言うのを聞いて、どうしても蜜ちゃんに会わせたかっただけですの!」




マミヤちゃんは今にも泣きだしそうになりながらそう叫ぶ。




王子をキッと睨んでそう叫んだ。





あたしはあまりの事に頭が回らず、グルグルと渦巻く頭を抱え、一生懸命に整理をしようとした。





えぇと……



王子のお父様が、彼女(あたし)がいるという事を知って…蜜歩ちゃんに会わせようとした…??ってこと…??






でも、それって─…




.

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