第85話

新地はあたしを見て、フッと笑う。




「…なによ」




少し恥ずかしくなって、あたしは視線を外した。




「別。それくらいがいいな、と思って」




………



へっ?!




拍子抜けして、あたしは前にすっ転びそうになる。




「…もし、辛くなったらいつでも話聞いてやるよ」




新地はあたしの頭に手を置いて、転ばないようにと支えてくれた。




片方の手だけであたしの額を支えて、端からみると斜めに傾くあたしが少し可哀相。




「…言ってくれてることはすっごく嬉しい。嬉しいけど……この支え方、あんま嬉しくない…」




あたしは、照れてることがばれないようにそう呟いた。




「…指一本よりはマシだろ。……ていうか指一本は折れるから無理」




「むっかぁ!!!」




「むっかぁって…!怒りの表し方素直だな」




あははと笑う。




屈託なく笑うから、何だかホントに拍子が抜ける。




ただ辛かったあの気持ちが、あたしの中から少しだけ遠くなっていく。




王子にも、マミヤちゃんにも尋ねてみよう。




ちゃんと聞いてみよう。




どんな事実が飛び出したとしても、やれる限りやってやろう。




女千亜稀、16歳。




恋して、傷ついて、なんぼでしょっ!!!




止まってるだけじゃ始まらない!!




「新地、ありがとっ!!!!」



あたしは大きく、そして力に満ちた笑顔でそう伝えた。



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