第78話

本当は、いつもなら、絶対見られたくないコイツが目の前にいる。



いきなり近づいたその姿に、あたしは動くことができなかった。



白いシャツが見えなくなっていく。



あたしはそのシャツを掴んで、崩れる顔で世界を消していた。




「うっ…」




堪えていた嗚咽が、音となる。



肩を震わせて、瞳を閉じた。



「…ぅぐっっ」



ぎゅっとシャツを掴む。



少しだけ汗の匂いがする。



濡れたシャツがあたしを包み込んでいく。




「…だから言っただろ…。いつか絶対…」



そう言って、言葉をとめた。



そっと優しく抱きしめて、「はぁ」っとため息をついた。




「…お前が泣いてると、調子狂うんだよ」

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