第77話

廊下を駆け抜けるその姿が、いつになく悲しくて気づけば後を追っていた。



いつも強気に笑って、意地張って、イメージとしては子供がベロを出して威嚇するみたいな態度を見せて、だからますます目が離せない。




無理しているようで、必死で背伸びしているようで、気づけば俺は、目が離せなくなっていた。




コイツ、本当にアイツでいいのか?




アイツが余裕で笑う度、その姿は単純に、素直に反応してはイラついてる。




そして俺は隣で思う。




気がつけば、俺はいつもコイツのことを思っていた。





「なっ…!!!にやってんだ…?」



腕を掴んで振り向かせたその姿に、いつもの顔はなかった。



涙でぐちゃぐちゃになった顔で、でも最後まで弱さは見せずに睨んでいた。




─泣いてる?─




思った時には、抱きしめていた。



そんな姿、見たくない。



泣き顔なんか見たくない。



本当はいつだって笑っていてほしいんだ。



太陽にも負けないくらいのハツラツとした笑顔で、いつもみたいに笑っていて欲しいんだ。

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