第76話

「なっ…!!にやってんだ…?てか、え?



泣いてる…?」




その姿は戸惑いを隠せずにいる。



掴んだ力が緩んだので、あたしは背中を向けて鞄を掴んだ。



下を向くと涙が溢れ出す。



鞄にぶら下がっている揃いのぬいぐるみが、あたしを見上げていた。



あの子と買った、色違いのぬいぐるみが鞄から下がっている。




ポツリ…と涙が円形を作った。




信じていたモノが消えていく。




音を立てずに消えていく。




「…っ…」




あたしは唇をかみ締めて、涙声を聞かれるまいと必死で肩だけを震わせた。



こんなことで泣きたくない。



涙なんか見せたくない。



あたしは必死で唇をかみ締めた。




「!!!」




視界が反転する。



気がつけば、白いシャツの中で呼吸ができなくなっていた。

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