第75話

顔なんかぐちゃぐちゃで、髪の毛なんか乱れて、廊下を歩く人たちは、驚いて一瞬顔を強張らせた。



あたしはお構いなしで、教室へと走りこむ。



落ちる夕日に教室の中は幻想的な色に染まっていた。




紅い夕日がゆらゆらと揺れている。



いつもは綺麗な夕焼けが、今日は何だか痛かった。



真っ赤に染まる太陽って、きっとこういうことを言うんだ。



涙のせいで何倍にも輝きを増し、ゆらゆらと揺らめいている。



あたしの心を映し出すように、視界は紅く染まり、痛いよと悲鳴を上げているようだった。




ガシャンッ




ドアにぶつかっても気に留めず、あたしはカバンを掴んだ。




「っ!!」




同時に腕を掴まれて、あたしは態勢を崩す。




強制的に振り向かされながらも、あたしはその姿を睨んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る