第68話

「自分の気持ち、ちゃんと克穂くんに言えてるよ」



あたしは強い口調でそう言った。



言ったというよりは叫んでいた。



でも、耳を澄まさないと聞き取れないくらいのとても小さな声で。



「そっか」



蜜ちゃんは、やけに落ち着いた笑顔を見せて回れ右をした。



「聞きたかったことはこれだけ。ここからもで十分眺めが良かったよwありがと」



ルン♪と鼻歌を歌って、蜜ちゃんは螺旋階段を下りていく。



何事もなかったかのような、蜜ちゃんにとっては何事でもなかったのか、あたしはまた一つショックを受けた。




あと少しで螺旋階段の円形、屋上につく。




次第に足が震え始め、螺旋階段を取り巻く鉄格子を掴んでヘタリと腰を下ろした。




蜜ちゃんは何を確かめたかったの?




麻生くんとの関係?



王子との距離?



あたしの気持ち?



何…??

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