第67話

あたしはゆっくりと蜜ちゃんに向き直った。



「蜜ちゃん、それはどういう意味?」



ゆっくりと、でも確実に言葉を並べ蜜ちゃんに問う。




王子よりも麻生くんに本音を言えてる?



リラックスしてる?



・・・どういうこと?




蜜ちゃんもゆっくりと視線を上げ、あたしを見上げた。




「…克穂の前より麻生くんの前の方が、千亜稀ちゃん何だか自然体に感じたから。克穂、我が強いっていうかすぐ千亜稀ちゃんを押さえつけるでしょう?だから千亜稀ちゃん、無理してるんじゃないのかなって思ったの」




こう、蜜ちゃんに言われるまで考えもしなかったこと。



これが後々になって、その通りだったと気づくなんて、今のあたしは思ってもいなかった。



この瞬間、何だか凄く腹が立って、あたしは蜜ちゃんを睨んでいた。




『だから克穂のことは蜜に任せて』



蜜ちゃんがそう言っているように聞こえた。




「そんなことない。ちゃんと克穂くんに言えてる」



あたしは蜜ちゃんの目を見ることが出来ずに、視線を足元に落として言った。



必死で言った。



喉の奥が熱い。



蜜ちゃんが気になってるのは、あたしのことでも麻生くんのことでもない。



王子のこと。



最初から王子のことだけが気になっていたんだ。

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