第63話
7月も中旬に差し掛かり、照り付ける太陽は夕方になってもまだまだ強い。
廊下は涼しいけれど沢山の人で溢れかえっているので、二人で話し込んでいたら確実に目立つだろう。
あたしは蜜ちゃんの手を引きながら、あの場所を目指した。
螺旋階段の上、丸く象られたあの場所。
階段が怖いから人はなかなかやって来ない。
「千亜稀ちゃん、どこへ行くの?」
蜜ちゃんの問い掛けに
「…えっと…眺めのいいところっ」
と、あたしは咄嗟に返事をした。
蜜ちゃんは「そう」と微笑んであたしの隣を歩く。
「こうしていると双子みたいだよね」
ニッコリ微笑む姿に、あたしはやっぱり驚いてしまう。
「えっ!?」
「蜜、兄弟いないから実はこういうの憧れてたんだ。いっつも克穂が羨ましかった。千亜稀ちゃんは咲人に会ったことある?」
ぺらぺらと話す蜜ちゃんに呆気に取られながらも、あたしはゆっくりと頷いた。
蜜ちゃんは、あたしが出しているこの壁を感じないのかな…
上手く言葉には出来ないけれど、よろしくないこの感情。
自分の好きな人の事を、自分よりも知っているあなたの存在は、あたしにとって決してイイモノではない。
そう思っているあたしに、蜜ちゃんは気付いているのだろうか。
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