第62話

「……へっ!!っくしょんっ!!!!……へっ」




あたしは大きくクシャミをして、ズズッと鼻をすすった。




「……誰だ噂してんのは」



へへっと笑って教科書類を整え、鞄の中へ入れようと鞄を開ける。




「最後の『へっ』までクシャミなの?」




…出た。




最近(あたし的に)渦中の人、蜜ちゃんがあたしの机に両手の指を反らす形で手を置いている。




あたしはゆっくりと視線だけを上げながら、教科書を整える手はそのままで蜜ちゃんを見た。




「……ついつい癖…でして」



「そうなんだ」



蜜ちゃんはニッコリと微笑んで、今朝の事なんて気にしていない様子だ。




面と向かって、麻生くん本人の前で


『どっちが好き?』


なんて聞いてきた。




奇想天外だから、次は何を言われるんだろうとドキドキする。




微笑む蜜ちゃんに、これ以上変な事言い出さないよね?と心の中で懇願しながら、あたしも微笑んだ。





「実はやっぱり気になる事があるんだよね…?聞いてもいいかなぁ??」




首を傾げて満面の笑みで蜜ちゃんはそう言った。




その満面の笑みと話の内容は確実に反比例しているだろう。




でも今朝とは違って、ワンクッションを入れてくれた事がありがたい。




二人きりで話そう。




あたしは蜜ちゃんの手を引いて、教室から出た。




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