第55話
追いやられた王子があたしの手首を掴む。
「可愛かったなぁ…。舐めた千亜稀」
涙が出てきているあたしに気づいていながら、王子は相変わらずにそう言った。
「っ…」
あたしはますます涙で目頭が熱くなる。
「キライ。大っきらい」
あたしは唇をかみ締めてそう睨んだ。
こんな奴、ほんともう嫌だ。
イジワルばっかり、からかってばっかり、自分はいつもこんな顔して余裕に笑って、あたしばっかりドキドキして、真剣に悩んで、真剣に想って…。
本気の本気で恥ずかしくて、消えちゃいたくて、涙だって出てきちゃってるのに、イジワルをやめてくれない。
「…マジで言ってる?」
王子の声はまだ笑っている。
…キライ
大っきらい
「…嘘で言える言葉じゃないでしょ」
あたしは低くそう言った。
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