第42話

あたしは穴が開くほど麻生くんを見つめる。




誰一人としてハッキリとは言ってこなかったこの発言。



眉間に重心を集めて、あたしは麻生くんを睨んだ。




「…てか、この顔二つもあったっけ?」



麻生くんは迷惑と言わんばかりの表情で、あたしたちを見つめている。



蜜ちゃんはますます不思議そうに麻生くんを見ていた。



「ねぇ、あなた名前は?」



あたしの前を通り過ぎ、蜜ちゃんは麻生くんに近づく。




「は?あんたこそ誰?」



麻生は不機嫌そう。



あ…ついついコイツには『くん』を外したくなってしまう…。



敬称をつけてるのが癪っていうか…。




「わたし?わたしは村岡千亜稀の双子の妹」



…は?



世界の時間が一瞬止まり、スローモーションで微笑む蜜ちゃんを見た。




「…それはないな」




そう言うと、麻生くんは小さく笑った。

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