S♥11

途切れた愛のメロディー

第39話

「きりーつっ」



「礼っ着せーき」



日直の号令に従い、あたしは席に座った。



昨日は葛藤にかられ、どうにか勝利した。



王子の部屋に入ろうか、入るまいか、探そうか、探すまいか、見ようか、見まいか…。



すべて「NO」を選択し、今に至る。



罪悪感のない朝は目覚めがいい



「千亜稀ちゃん、そのクマどうしたの?」



…はずがない。



別に疑ってるわけじゃないんだけど、やっぱり気になっちゃうんだよ、ね?



あたしはその声に重い頭を上げる。



「…蜜ちゃん…」



目の前には今一番タブーな顔があった。



「風邪?大丈夫?昨日も辛かったんでしょ?克穂が言ってた」



蜜ちゃんの呼ぶ「克穂」という呼び名は何か落ち着かない。



あたしよりもしっくりきてしまうから。



「うん…大丈夫」



「夏風邪はバカがひくっていうから。治るのも早いし」



「!?」



あたしはその『補足』に大きく振り返る。

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