第38話

「ふゃ!?」



瞑想に浸っていたあたしの鼻をつまみ、王子は言う。




「会話の途中で意識飛ばすな。妄想はあとにしろ」



あたしは鼻を押さえて、もごもごと口の中で悪態をついた。



「いきなり触んないでよねっ!!…今の時間帯が、一番脂っぽい多いんだから…」



きゅっきゅっと手のひらで鼻の頭をこすって、王子を見る。



「これですっきりした?」



と、余裕の笑み。



「蜜歩が絡むと千亜稀しょげるもんな」



きっ


気づいてたのか!!



「だからついつい…」



くいくいっと指を伸縮させ、王子はあたしを捕まえた。




「あんまり可愛いことすんなよ」



そう耳元で囁くから、あたしは真っ赤になって囁かれた耳を押さえる。



「○#&+Ψーーーーー!!!」



叫ぶと予想されていたのか、押さえられた口元であたしは奇声を上げた。








「ん?」



廊下でおじい様が首を傾げる。



「空耳かの?」



「…たぶん」



王子は笑いをかみ締めて、あたしの部屋のドアを閉めた。



「さぁ、行きましょうか」






甘い蜜に誘われて、空を舞うは白い蝶。



ひらりひらりと舞い解けて、空に消えるは恋の羽─…

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