第35話

その言葉まで聞き取ってあたしはグラスを手放した。




ゴロンと鈍い音がフローリングに転がって、あたしは放心する。



なんかショックだ。



蜜ちゃんと似てることで、あたしがあたしじゃなくなるような印象を受ける。



佐伯原家のみんなからは「蜜ちゃんに似てるから」という目で見られていたのかもしれない…。




ガチャ



王子がドアを開けて入ってきた。



「っ!?」



あたしの口元を押さえて、シッと人差し指で静寂を要求する。




「静かに。じいさん、まだそこにいるから」



あたしはコクコクと頷きながら、グラスを自分の後ろに隠した。



ドアを閉めて、王子はあたしをベッドに座らせる。




「…聞いてたみたいだけど、俺と蜜歩の関係はそういうことだから」



王子はすべてを見透かしていたのか、隠した後ろ手からコップを拾い上げた。



「…なんとも古い聞き方で」



顎を上に反らせて、見下ろすような表情を浮かべる。




あたしはそんなことお構いなしに、頭の中で言葉を整理していた。




そういうことって…?

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