第22話

「っし!」



本日2回目の気合を小さく入れて(しゃがんだままドアの片隅に向かって)、あたしは気合いを表すように勢いよく立ち上がった。




ゴチーン!!!




「痛っ!!」


「っ」



あたしは後頭部を押さえて振り返る。



「ったくホント腹立つ女」



王子が顎を押さえて立っていた。



緊張マシーンがピシっと音を立て、あたしの周りを取り囲む。



さっき湧き上がったやる気度は急激に萎んで、頬から何から硬直した。



「や、やぁ!」



頭はジンジンと脈を打っているが、そんなのどうでも良かった。



「…やぁってなんだよ」



王子はフンッと鼻で笑い、優しさの欠片も見せない態度を取る。



「今日はとても暑かったからね」



違うっ



「言わなくてもわかるし」



「マミヤちゃんと食べたアイスクリームがとってもおいしかったな」



違う違うっ

こんなことを言いたいんじゃないのにっ




「…だから?」



まったくご機嫌の思わしくない王子が、目の前でイライラと血管を動かしている。



さっきのがんばってやるぜ+゜という気合いはどこかに流れ去り、あたしは力をなくしてしまった。




「…ごめんって」

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