第19話
時刻は午後6時。
すっかり夏に近づいた空は、まだまだ黄色を帯びて明るい。
本当は黄色ではないのに、色で例えるなのなら「黄色」なのだ。
いつも冷房の中に入っているから、体は弱くなっている。
「暑い・・」
「もう夕方だというのに暑いですわ・・・」
さすがのマミヤちゃんも髪の毛がベトッとくっついて暑そうだった。
今までは送り迎えばかりで、どこに行くにも自分の足ではなかったらしい。
あたしはもともと歩くことが好きなのと、運転手がいると話がしにくいこともあって、ずっと断っていたら最近は何も言わなくても車は待機しなくなっていた。
「こんな中で部活をするなんて考えられないですわね」
マミヤちゃんは髪を束ねて綺麗な首筋を見せた。
校庭では野球部ならぬソフト部が練習に励んでいる。
「…そういえば知ってたの?」
フェンス越しに爽やかな汗を見ながら、あたしはマミヤちゃんに訊ねた。
確かあの時─…
『可愛い悪戯』
「・・・可愛くないけどさ」
あたしはため息と一緒にそう漏らす。
「うふふ」
マミヤちゃんは嬉しそうに微笑みを落とした。
その笑みに、敢えて言わずにいたあたしは恥ずかしくなる。
「知ってたなら言ってよ~~!!ずっと言いたかったんだから~!!!」
あたしはマミヤちゃんを追いかけて捕まえて、抱きついた。
「…暑いですわ」
「同じく」
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