第13話

浮いたり沈んだり、激しいあたしの先で、王子は蜜ちゃんを解放した。




「OK~」



蜜ちゃんは笑顔でそう言って、階段を降りて来る。




その背を見送って、王子も一段ずつ階段を降りてきた。




………。



あたしは睨むように王子を見た。



(…あ…)



また。




「千亜稀も今夜空けとよ」




優しい瞳であたしの頭を触る。



蜜ちゃんに触れた後は必ず優しい…。




なんで?



いつもの王子はこんなんじゃないよね?




もっと強気でイジワルで、誰にも気付かれないように企んで、そうしてあたしを魅了するんだ。




「…嫌だ」



「は?」




あたしの声はチャイムで掻き消され、王子を背に置き、振り返ることなく教室に入った。




嫌だ。


嫌だ嫌だ嫌だ。




意味分かんないよ。



なんだよ、あの笑顔。




……「も」?



「も」って言ったよね?




蜜ちゃんも誘ってる…



同等の扱い?




そんな小さい事が嫌だ。




こんな事で嫌だと思う自分が嫌だ。




「ゔーーー」




あたしは喉を鳴らしながら、机に俯した。




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