第10話

佐藤くんは逃げるのではなくしゃがんだので、あたしは佐藤くんに躓く。




ドテ-ッ




「いったぁ…!いきなりしゃがまないでよ!」




イテテと腰を押さえてあたしは立ち上がり、佐藤くんもひょこっと顔を持ち上げた。



脂汗がマックスだ。




「で、ペンギンって何?」



ここまで仕掛けておいて、一人無傷の蜜ちゃんが話を戻す。



「Σ!!」



あたしはショックの色を隠せなかった。



そんなあたしを横目に、佐藤くんはホロホロと口を開く。



「ペンギン人形をあげたんだ。本当はずっと返してもらいたかったんだけど…」



「一度あげたものを返せ、なんて恥ずかしくて言えないもんね」



蜜ちゃんは、うんうんと頷いている。



「いや…そうじゃなくて…」



佐藤くんは小さく声を濁した。



「アイツが見てるんだよ、そりゃぁもうすごい人相で。話し掛ける隙もないくらい」



そう言うと何かを思い出したように身震いしている。



「?」



蜜ちゃんはハテナ顔をしているが、あたしは胸がドキンと鳴った。




それってもしかして…




「佐伯原が目を光らせてたんだよ」




.

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