第7話

チャイムが終わりを告げ、あたし達は教室に戻った。




廊下で誰かがもめている。




男の大きな背中が邪魔をしてこのままじゃ教室に入れなさそうだ。



この学校は、廊下まで冷暖房完備だから廊下も涼しいはずなのに、そのムチムチした背中を見るだけで何故かこめかみに汗粒が浮き上がった。




「だから僕のペンギンを返せよ!」



「ペンギン??知らないってばぁ」



たまたま聞いてしまったこの一場面に、あたしは足幅が狭くなる。




ペンギン?



なんだ?この不吉な心音は…




あたしは足を止めて、右手で頭を抱えた。




「人、間違ってるでしょ?蜜あなたの事、今の今初めて見たし」



「下手な嘘をつくな!僕は君にペンギンを送ったんだ!」



「なんでペンギンよ!バニーちゃんがいい!うさぎがいい!」



「いーやペンギンだ!」



「うさぎ!」



「ペンギン!」



「うさぎ!」



「ペンギン!」



主旨の変わった言い争いを横目に、あたしは顔を隠して通り過ぎる。



マミヤちゃんはそんなあたしを不思議そうに見つめていた。




「うさぎ…っ」



「「あっ?!」」



二人の声がこちらを向いたので、あたしは背筋がヒンヤリと凍るのを感じた。




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