第7話
チャイムが終わりを告げ、あたし達は教室に戻った。
廊下で誰かがもめている。
男の大きな背中が邪魔をしてこのままじゃ教室に入れなさそうだ。
この学校は、廊下まで冷暖房完備だから廊下も涼しいはずなのに、そのムチムチした背中を見るだけで何故かこめかみに汗粒が浮き上がった。
「だから僕のペンギンを返せよ!」
「ペンギン??知らないってばぁ」
たまたま聞いてしまったこの一場面に、あたしは足幅が狭くなる。
ペンギン?
なんだ?この不吉な心音は…
あたしは足を止めて、右手で頭を抱えた。
「人、間違ってるでしょ?蜜あなたの事、今の今初めて見たし」
「下手な嘘をつくな!僕は君にペンギンを送ったんだ!」
「なんでペンギンよ!バニーちゃんがいい!うさぎがいい!」
「いーやペンギンだ!」
「うさぎ!」
「ペンギン!」
「うさぎ!」
「ペンギン!」
主旨の変わった言い争いを横目に、あたしは顔を隠して通り過ぎる。
マミヤちゃんはそんなあたしを不思議そうに見つめていた。
「うさぎ…っ」
「「あっ?!」」
二人の声がこちらを向いたので、あたしは背筋がヒンヤリと凍るのを感じた。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます