第3話

チャイムの音色が廊下に響き、観衆達も動き始めた。



「じゃぁまたね!」



蜜歩ちゃんはあたしたちに笑顔を向けて手を振り、あちら側に歩いて行く。




王子がふぅっとため息をついて肩を下ろした。




そして視線をあたしに注ぐ。



「…どうした?」



クエスチョンマークを瞳に浮かべた王子が、あたしを見た。




「っどうしてあっちに…?」



あたしは視線を斜めに落として呟く。




本当はこんな事どうでもいいのに聞いてしまう。



本当に知りたい事はこんな事じゃない。



こんな事じゃないのに。



視線を落としたまま蜜歩ちゃんの背中を小さく指差した。




「アイツ体験入学みたいなもんだから」




『アイツ』という言葉に、あたしは胸がキュウッと締め付けられる思いがする。




王子と蜜歩ちゃんの関係に敏感になってしまう。




どんな関係なんだ


どんな間柄なんだ




頭の中では何度もそのフレーズがリピートされていた。





「…たまたまだよ」




教室に入る直前に、王子はあたしの頭にポスッと手を置いた。




「たまたま?」




一瞬意味が掴めずにあたしは両手で頭を触り、ポカンと王子を見つめた。




「そう」




クスッと笑みを零す王子がいつになく優しかった。




─優しくしないで─




心の中で聞こえた自分の声にあたしは驚く。




(あたし…今、なんて思った…?)




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